あんこの開墾日記

自分自身を耕して、掘り起こして、本当にしあわせな私のありかたを発見したい。そんな想いで書いてます。

人を笑顔にする

ボラバイトに行くことになった経緯

この夏、随分と前から北海道に旅行に行くことが決まっていました。私にとって初めての北海道。2泊3日じゃ全然足りない。せっかく行くならもっと北海道を満喫したい。そんな欲張りな考えが頭に浮かび、どうしたら北海道にもっと長く滞在できるかを考えていました。

 

そこで見つけたのが「ボラバイト」でした。

半分ボランティア、半分アルバイト。全国各地いろいろな派遣先があり、業種も農業・酪農・ペンションなどなどいろいろな働き方があります。なんといってもその魅力は、滞在費がかからないこと。労働力を提供する代わりに宿代や食費が浮くというお金のない大学生にとっては嬉しい待遇です。

 

「北海道の農業を体験してみるというのもありなんじゃないか」

私が日頃触れているのは千葉や茨城でさかんな近郊農業。

でも農業ってその土地にあったいろいろなやり方があるはず。

関東だけではなくて、もっといろいろな地域の農業を見てみたい。

 

そんなわくわくするアイデアが浮かんでしまったからには、もう止められません。

派遣先にアポをとって、各種チケットを予約し、いざ出発!!

 

度肝を抜く北海道のでっかい農業

北海道に着いて驚くのは畑の広さです。

空港から電車やバスを乗り継ぎ目的地へと向かったのですが、車窓から見る畑の様子は圧巻でした。

見渡す限りの単一作物、抱えきれないほど大きなコンテナ、機械が入りやすいように整備された畑、最大限効率よく作業出来るように工夫された大型機械。

日頃から農業に携わっていると言えども、見慣れないものばかり。だって私が普段見ているのは小さな畑でいろんな種類の野菜を作り、作業の多くを人の手で行っているような近郊農業。同じ農業と言えどもところ変われば方法だって全く別のものになるわけです。

 

さらにお話を聞いたところ、私がいた十勝地域ではほとんどの農家さんは1年に4か月しかお仕事をしないんだそう。そしてあとの8か月は遊んで暮らすんだそう。衝撃。その4か月で1年生活できるくらいには稼ぐってことでしょ。そのうえ遊びをできるくらいには稼ぐんでしょ。北海道の農業ってやっぱり儲かるんだなぁとただひたすらに感嘆していました。

 

野菜を売る側に立つ

派遣先に無事到着して、「さっ畑でお仕事するぞー!」と意気込んでいた私ですが、実際の仕事内容は道の駅で茹でとうきびを試食販売することでした。北海道の農業やってみたかったんだけどなと後ろ髪をひかれつつ、野菜を売るというお仕事も経験したことがなかったため楽しくすることが出来ました。

 

いつも私は作る側。だから野菜を食べる人の顔を知らない。その野菜がおいしいことは知っているけど、その野菜をどんな人がどんな顔してどんなこと考えて手に取っているのか、そのあとどんなふうに料理してどんな人と一緒にどんな気持ちで食べているのか、私は知らない。

そんなことまでちゃんと想像したことはなかったけど、直売場に立って、買っていく人の顔を見て「私はこれまでこの顔を見たことがなかったな」ということに気づかされました。

 

 

目の前でとうきびをほおばり「おいしい!」と目をキラキラさせる人たち。

「ほらほら○○ちゃんも食べてみな」「これなんていう品種ですか?」「毎年ここのトウキビはおいしから買いに来ちゃうのよね」「何本買っていこうか?」「地方発送って出来るんですか?」「これ、茹で方に秘訣とかあるんですか?」「ここのトウキビが北海道の中で一番だよ!!」

 

おいしいものからたくさんの会話が生まれる。笑顔が生まれる。そこに立ち会えているというのが私にとってはとてもしあわせな経験でした。

この光景をつくり出しているのが自分が作った野菜だったらどんなに嬉しいだろう。

この先そんな仕事ができたらどれほどしあわせだろう。

そんなことを考えながらたくさんの人の笑顔を見ていました。

 

 お客様にどうみられているか

売り場を取り仕切る園長さんのお母さんには、食品を売る者としての心構えを教えていただきました。常に身なりを清潔に、仕事場の整頓を心掛ける、茹でたトウキビを素早く保温用の発泡スチロールに入れ温かいものを提供する。当たり前のことと言えば当たり前なのかもしれない。でも忙しい作業の中でついつい忘れてしまう。

でもこういうちょっとしたことが一番大切にするべきことで、食べ物を売るものとして決して忘れてはいけないこと。「ここの野菜を食べたいな」「ここのお店の人感じいいよね」お客さんにそう思ってもらうために大事にすべきこと。

 

ボラバイトをしている間、ここの売り場がたくさんの人に愛されていること毎日感じていました。それは茹できびがおいしいことはもちろんだろうけど、それに加えてそうしたお客さんに対する配慮とか、常連さんに対するサービスとか、対応するときの笑顔とか、そうした一つ一つの重なりが人々から愛されることにつながるんだろうなと考えたり。

 

そこのお母さんがよく使う言葉が「おかげさまで」。

今までこの言葉に注目したことがなかったけど、考えてみるととっても素敵な言葉だと感じました。

「あなたのおかげで今の自分がある」

そんな恥ずかしくて面と向かって直接言えないような感情を、でもちゃんと伝えるべき感謝を、にこやかに颯爽と言ってのけることが出来る。そんな素敵な言葉に再会することが出来ました。

 

家族連れがみんな幸せそうに見える

道の駅でも販売では多くのお客さんが家族連れでした。

小さい子を連れた夫婦や私くらいの年齢のお子さんがいる家庭、二人でご旅行されているのかしらの老夫婦。年齢は違えどお客さんは一人でも友達同士でもなく、家族連れがほとんど。

そんな人たちを接客の合間に見ていると、なんともしあわせそうだなと感じます。

家族といるってしあわせなことなんだな。

大切な人と旅行に行けるってしあわせなことなんだな。

今回一人でボラバイトに来たので、余計に強くそう感じたのかもしれません。

 

1年前、倉敷で一人旅していて感じた「自分は大切な人を大切にできているのだろうか」という問いを1年越しに思い出しました。我が身を振り返る。今回こそ一人で北海道の地に来ているけど、多分できているはず。自信はないけど。少なくとも1年前よりは。ちゃんと向き合って、伝えたいこと伝えて、大切にできているはず。

 

いかにボラバイターを楽しませるか 

私は普段、誰かを笑顔にするために何か行動するということがほとんどありません。

思えばいつもいかに自分が楽しいことをするかということばかり考えていて、あまり周りに人に気を遣ったりすることが苦手であるということを自覚し、そのうえで「そういう性格だからしかたないのかもな」と今まで開き直っていたように思います。

 

そんな価値観をちょっとばかり崩してくれたのが、農園の方の優しさでした。

とにかく私たちを楽しませようと一生懸命。

農家さんって畑仕事だけでも収穫や管理など仕事は山ほどあるのに、それに加えて発送の手続きやお客様の対応、お店の準備や片付けなどが連日ある中で、それでも私たちを楽しませようそしてくれるその優しさに感動しました。

花火を見せに行ってくれたり、町内会のお祭りに連れて行ってくれたり、快晴の日に十勝平野を一望できる高台に連れて行ってくれたり、お店を閉めた後に素敵な美術作品がたくさんある「六花の森」という場所に連れて行ってくれたり、ことあるごとに「トウキビ食べるか?」とニコニコ差し出してきてくれたり。

こんなに人の為に行動できる人って素敵だな。

素直にそう思えました。

 

私はまだまだそんな人になれないけど、「そんな人になれない」って割り切るんじゃなくて、「目の前にいる人を笑顔にしてみよう」という意識を持つだけでも自分の中で何かが変わるかもしれないなと感じました。

 

 

テーマは「自分史」

ボラバイトの最後に農園の事務所に残していく色紙を書きました。園長さんがバラバイターに毎回頼んでいるものらしく、事務所には歴代のボラバイターの個性豊かな色紙が所狭しと並んでいます。

皆それぞれ自由に書いているのですが一応テーマは「自分史」と設定されているらしく、私はそれに倣って書くことにしました。自分史と言えども、ここまで20年間も生きてきたのだから色紙1枚に収まりきるような内容ではありません。ということで私は「ごはんの自分史」について書きました。

 

小学生の頃はきのこが食べられなかったこと、

中学生の時にあんこが好きになったこと、

高校生の時は部活で結果を残すために大好きな甘いものを我慢していたこと、

大学生になって農業をするようになったこと…

(これらだけではなくもっともっとたくさんの出来事がありますが)

 

最初はどんなふうに書こうか悩んでなかなか書き始められなかったのに、書き始めたらどんどん筆が進んでいく。時々おいしかったごはんのことを思い出しながら、子どもの頃の図工の時間を思い出しながらいつのまにやら完成していました。

 

絵を描くの楽しいな。

もう少し日常にゆとりを持って、絵を描くことを趣味にして見てもいいかもな。

なんて思った最終日でした。