あんこの開墾日記

自分自身を耕して、掘り起こして、本当にしあわせな私のありかたを発見したい。そんな想いで書いてます。

大三島

私が瀬戸内海の中で一番好きな島、それが大三島

しまなみ海道のちょうど真ん中のあたり、まぁまぁ大きい島ではあるけれど、海道の最短ルートを通るとほんとにかするくらいしか通らない島。

昨年の夏、初めてしまなみ海道を自転車で訪れたとき、何も考えずに宿泊の予約をした。その宿の場所が大三島だった。正規のルートの全く逆の方面の場所に位置する宿をとってしまったため、私は島内を突っ切り、島を半周する羽目になったのだ。

想像以上に島は広く、自転車走行2日目の私に大三島の起伏の激しさはつらいものがあった。なんで「あの場所の宿をとってしまったのだろう」と何度後悔したことか。漕いでも漕いでも抜けられない大三島地獄に完全にはまってしまった。

 

結果として、その選択で私は大三島に魅せられる。

 

大三島地獄を体験している道中、伊東豊雄建築ミュージアムという場所に立ち寄った。ここでは大三島で暮らす人たちの展示が行われている。その展示を見て1年前の私は「こうした穏やかな土地で暮らしていくって素敵だな。しあわせだな」と感じたのだ。

 

展示の中に映る人たちは、日々の生活とか家族とか地域のつながりとかそういうものを大切にして生きている印象だった。私は都会で、早くて、便利で、たくさんあって、何も困ることのない生活を送る代わりに精神を摩耗していくよりも、こうしたところで心豊かに暮らしていきたい。空が青くて、海が美しくて、緑に溢れているような場所で暮らしたい。別にそれまで田舎に住みたいとか、都会で暮らしたくないとかそんなこと一切考えたことがなかった。でもその展示は私の今までを容易にひっくり返すくらいに心に響いてきた。

 

そのあとに立ち寄ったカフェもとても素敵だった。

アップダウンが激しい海沿い力ずくで登って風にくすぐられながら下って、今治を目指してひたすらに漕いだ。途中何度も止まりたいと思ったけど休憩できる場所すら見つからなかった。

 

せめてお昼ご飯くらいはここで食べていきたい。そう思ってから随分と時間が経ってから私たちの目の前に現れたのが小さなカフェだった。

今ではもう名前も覚えていない。でも強烈に印象に残っている。海沿いの白い壁の大きな窓がついたおうちみたいなお店。1階にカウンターとテーブルがいくつかあって、2階にも4つくらいその空間と融合したセンスのいいテーブルがあって、ハンモックがついている、そんなお店。名前は憶えていないのにそんなことはやけに覚えている。写真を撮ったわけでもないのに。

1階でメニューを注文してから2階に移動した。1階のカウンターよりも2階のテーブルの方がきれいな海がよく見えたから。かぼちゃの冷製スープが火照った体をちょうどいいくらいの体温に戻してくれた。

ご夫婦が2人で切り盛りしているようだった。それが私にはとてつもなくしあわせに見えた。こんな素敵な場所で、自分が愛する人と、自分がやりたいことをしている。

 

 

 

 

そして今年。私は再び大三島を訪れた。もう一度あの島に会いに行きたかった。美しい海の中に浮かぶあの島に。そして島で暮らす人々をもっとこの目で見たかった。

去年眺めた海を今年の気持ちで眺めて、

去年の展示とはまた違った展示を今年も見てきて、

去年のオアシスに見えたカフェは今年は見つけられず、

去年は巡り合えなかったおいしい海鮮丼に今年は巡り合い、

去年は憎らしかったあの坂を今年はエンジンを搭載して駆け上がる。

同じ所に来ているけど、去年の思い出巡りをしているようだったけど、そうじゃない。今年の大三島を見て感じてきた。

 

 

去年と今年は違ったけど、それでも私にとって大三島は特別な場所だった。

いつかあの場所に住みたいな、なんて思ったり。