あんこの開墾日記

自分自身を耕して、掘り起こして、本当にしあわせな私のありかたを発見したい。そんな想いで書いてます。

ゲストハウスに泊まる

大学生になって、高校生の時までほとんど旅行に行ったことのなかった私が、たくさんいろんな場所に行くようになりました。1年と9か月で巡った都道府県は27か所!行く時々によって、一緒に行く人によって、旅行の楽しみ方も様々です。

ある時は一人で、ある時は旅仲間と、ある時は高校時代の友人と、ある時は大学で知り合った友人と、ある時はサークルみんなで、ある時は実の姉と。

ごはんを楽しみに行ったり、きれいな景色を見に行ったり、ドライブを楽しみに行ったり、ボラバイトに行ったり、リゾートバイトに行ったり、キャンプをしに行ったり、美術館を巡ってみたり。

 

その中で今回は、「ゲストハウスを楽しむための旅」に行ってきました。

 

マスヤゲストハウス

諏訪にあるこの宿は、古くからある温泉宿を改装して作られたそう。一階にはバーカウンターとコタツがあり、キッチンがあり、本棚がある。バーカウンターは宿泊者でなくてもぶらりと来れる場所で、その日も別の場所に宿泊を予約している人も遊びに来ていました。コタツがあるってだけで私の幸福度はかなり上がります。

宿の中のいたるところにデザインの工夫がみられる、素敵な空間なんです。お話を聞いたところ、この空間を創り出している建材は、取り壊されてしまう廃屋の一部だったものばかりだそうです。かつて人々が暮らしているのを見守ってくれていた家の一部がゲストハウスという形になって私たちを迎え入れてくれる。なんだか不思議な気持ちです。ずっと人々を守ってきたものが壊されて、でもその一部がまた私たちを守ってくれている。いらなくなったからただ捨てる、のではなく、違った形になって、素敵なデザインに生まれ変わって、宿の一部になっている。知らなかったらただの個性的なデザインの宿。でもそこにあるストーリーを知ると、また別の意味を持った場所になる。

 夜はみんなでコタツに入っておしゃべりしたり、ごはんを食べたり、お酒を飲んだり、ゲームをしたり。和やかな時間。肩の力が抜ける時間。話しているうちに意外なつながりがあったりとか、周辺のおすすめの場所がわかったりとか、おすすめのゲストハウスが知れたりとか。そんなこんなで時間はあっという間に過ぎていきます。

ここにくるお客さんは、おしゃべりが好きみたい。みんなよくしゃべる。でも主張が強すぎない。人のおしゃべりを聞くのが好きな人も多いみたいです。これくらい穏やかな場所だと、私もおしゃべりしやすい。

 

諏訪の街中を歩いてみると、古い町で一見活気が失われているようにも見えるけど、そんなことなくて、新しいお店が最近増えてきているそう。これもマスヤができたことが大きなきっかけになっているそうで。マスヤができてからたくさんの人が諏訪を訪れるようになって、諏訪を好きになった人がマスヤとに助けてもらいながらお店をオープンさせたりしていて。ある一人のお客さんが「マスヤができてから人の流れが完全に変わったよ」って言っていました。建てられてから4,5年でそんなに周囲の人にそして地域に大きな影響を与えられる場所って本当にすごい。

 ゲストハウスが地域から隔離されたものではなくて、地域に根付いているものになっているのがすごいと思いました。これってなかなか難しいことだと思うんです。新参者が古くからある街にやってきて、新しいビジネスを起こして、その地域に受け入れられるってこと。それがきっかけで、さらに移住者を増やすということ。それを実現しているこの宿はすごいところなんじゃないか。

 

http://masuya-gh.com/

 

 

古民家noie梢乃雪

玄関を入った瞬間「ここ、いい!」ってなる。そんな場所でした。

だって目の前に薪ストーブがあって、囲炉裏があって、コタツが出迎えてくれるんだもん。しかもかわいいわんこが激突してくるんだもん。もう、それだけで、めろめろです。でも辿り着くのがとっても大変な場所。絵にかいたような「ド田舎」。長野県の一番北にある小さな小さな村の中にある、山に囲まれて近くに川が流れて畑もあって、でもそれくらいしかない、そんな宿。近所をお散歩すると冬の風が顔を刺して、わんこが足をまとわりついてきて、さわさわ水が流れる音がしてきて、思わず深呼吸してしまう場所。

 

他のゲストが近所の温泉に行っている間に、私はスタッフのちかさんと一緒に夕飯の準備をしていました。この日のメニューは、キノコサラダ・長芋ユッケ・クリームチーズの醤油漬け・高野豆腐の唐揚げ・キムチ鍋と〆のラーメン。出来合いのものじゃなくて、ちゃんとおだしを取って、丁寧に作る。一緒にお料理していて、いつも丁寧に作っていることがちゃんと伝わってくる。

一緒にお料理をしながらちかさんとはいろんなおしゃべりができました。ゲストハウスのスタッフさんと、こんなに長い時間二人きりでおしゃべりするなんて初めてでした。ちかさんはあと少しで3年いたこのゲストハウスをさよならしてしまうらしくて、それが本当に寂しいと。私もせっかく出会えてこんなに話して、でも次来た時にはいないと思うととても寂しい。たった1時間おしゃべりしただけで、相手にそう思わせてしまう彼女の人柄が素敵。

印象的だったのが「またここに戻ってくる」「この幸せって当たり前じゃないんだ」って言っていたこと。本当に彼女はここが好きなんだ。きっとたくさんのお客さんに愛されているからそう思えるんだろうし、彼女自身もここにくるお客さんを愛しているから、そう思えるんだと思います。自分が本当に好きと思える場所が、帰ってきたいと思える場所があるって素敵だなぁと思います。

「たまに一人で食べると、いつもみんなと一緒に食べている分、寂しいというかつまらないんだよね。そういう時、いかに普段自分が豊かな生活をしているかがわかるんだ。いつもは当たり前と思っちゃっているけど、全然当たり前なんかじゃないんだね」私も日々おんなじことを思っている。誰かと食卓を囲むことは幸せで豊かで、決して当たり前のことじゃない。それだからこそ、そういうことが普段からできている自分の身の回りへの感謝を、ちゃんと忘れずに持ち続けていたいなと思ったり。

 朝、起きたらごはんの準備が始まっている。薪ストーブの上の鉄板にじゃがばたとベーコンと目玉焼きがお行儀よくのっている。その光景だけで私は幸せです。昔の暖房器具ってなんにでも使えるんだ。改めて人の知恵って偉大だと感じました。自分の体を温めるだけじゃなくて、部屋全体も暖めて、料理をするにも一役買って。ひとつの器具がひとつの役割に縛られないで、自由な発想の使われ方をしている。ひとつのものがマルチに活躍できるっていう発想、現代の機器にはあんまり見られない気がする。

しっかし、こんなにしっかりごはんが出るゲストハウスって初めてだなぁ。旅行の中でやっぱり「おいしいごはん」というのは重要な立ち位置を占めていて、それさえあれば大抵どんな行先でも私は幸せ。外に食べに行くのも好きだけど、こうして宿で食べるごはんって落ち着きますよね。食べた後に「帰る」という行為がないのがいい。食べてそのままゴロンて出来るのがいいですよね。お酒も程よく飲めるし。

 

http://kominkasaisei.net/

 

 

 

 

びっくりしたのが、どちらの宿もかなりの数の「ファン」がいること。

「ゲストハウスが好きな人」って結構いるみたいで、そういう人たちって多いときは毎週のようにいろんなゲストハウスに泊まっているそうな。そうした人たちが愛してやまないのが、今回私が訪れた2軒でした。実際に行ってみると、確かに何度も泊まりたくなる気持ちがわかります。この2つの宿の魅力を語るにはきっと1泊では足りません。本当に心からまた来たいと思える場所でした。

 

その一因として考えられるのが、スタッフの温かさだったのかもしれません。今まで私はゲストハウスに泊まっても、なかなか馴染めないままでした。なんとなくいろんな人が話している輪に入っていけない感じがして。でも今回の宿はスタッフさんの印象も他のお客さんの印象もほんのりあったかい感じの人が多くて。きっとスタッフさんがそういう人柄だから、自然とそういう雰囲気をまとった人がその場所に集まってくるんだろうなとか思ったり。あと私が今まで泊まったゲストハウスは、みんなで夜ご飯を食べる型のものではなかったのも大きかったのかもしれません。食卓を囲むって偉大だ。

 

ゲストハウスに味を占めたので、またタイミングがあれば一人旅に出たいな。